最終更新日 2026年10月28日 by eliyeliy
夜中に何度も授乳していて、「このままだと虫歯になるのかな」と不安になっていませんか。
歯科衛生士の井上佳奈です。
先にお伝えすると、母乳やミルクそのものが虫歯の主な原因になるわけではありません。
リスクを上げるのは、砂糖をとり始めてからの夜間授乳と、歯に汚れが残ったままの状態です。
授乳をやめずにできるケアを、一緒にチェックしましょう!
目次
母乳やミルクそのものは、虫歯の主犯ではありません
母乳の乳糖は、比較的虫歯をつくりにくい糖
母乳には「乳糖」という糖が含まれています。
糖と聞くとドキッとしますが、神戸市の「赤ちゃんの歯の健康づくり」によると、虫歯菌は乳糖から酸はつくれても、歯にベタッと張りつくネバネバ物質(デキストラン)はつくれないそうです。
ネバネバがないと、酸が歯の表面に長くとどまりにくくなります。
そのため、乳糖は砂糖にくらべて虫歯になりにくい糖とされています。
母乳を飲んだだけで歯が溶けていく、というイメージは持たなくて大丈夫です。
母乳か粉ミルクかで、虫歯リスクに差はない
「ミルクのほうが甘いから危ないのでは?」という質問もよくいただきます。
日本小児歯科学会の「こどもたちの口と歯の質問箱」では、母乳と粉ミルクで虫歯のリスクに差はないと答えています。
同じQ&Aで大事だとされているのは、母乳かミルクかではなく、飲ませる時間や姿勢のほうです。
あわせて「夜中の頻繁な授乳はむし歯になることもある」とも書かれています。
つまり、気をつけたいのは中身より飲み方とタイミングなんです。
1歳6か月以降の授乳と虫歯の関係を調べた研究
とはいえ、授乳が長く続くことと虫歯の関係を示すデータもあります。
大阪大学の研究グループが大阪府豊中市の子ども5,161人を追跡した研究では、1歳6か月の時点で母乳を続けていた子は、3歳6か月までに虫歯ができるリスクがオッズ比で約2倍でした。
この研究を紹介したケアネットの記事では、母乳と哺乳瓶を併用していた子でも同じような傾向が出ています。
ただし、この研究は夜間授乳の有無や授乳の回数までは調べていません。
母乳を続けていても、大半の子は虫歯になっていませんでした。
研究チームも、母乳育児そのものより、食事やお口のケアの習慣が鍵になる可能性を示しています。
私はこの結果を「卒乳を急いで」というサインではなく、「1歳半からはケアを一段ギアアップしよう」というサインとして受け止めています。
夜間授乳が虫歯につながりやすい3つの条件
寝ているあいだは唾液がほとんど出ない
起きているとき、口の中では唾液が酸を薄めて、溶けかけた歯の表面を修復してくれています。
ところが眠っている間は唾液の量がぐっと減り、この洗い流す力が落ちてしまいます。
寝ながら飲んだ母乳やミルクが口に残ると、昼間よりも長い時間、歯が糖にさらされることになります。
砂糖を口にし始めると、歯垢の性質が変わる
離乳食が進んで、おやつや甘い飲み物を口にするようになると、状況は一変します。
砂糖があると虫歯菌はネバネバの歯垢をつくり、歯に汚れが残りやすくなります。
神戸市の資料でも、歯垢がついたまま母乳を頻繁に飲む習慣があると虫歯になることがある、と説明されています。
先ほどの日本小児歯科学会のQ&Aでも、1歳半を過ぎて砂糖をとり始めた子が母乳を飲みながら寝ると、リスクが上がるとされています。
砂糖デビューの時期が、夜間授乳への向き合い方を変える目安になります。
哺乳瓶やマグで「ちびちび飲み」が続いている
哺乳瓶をくわえたまま寝る、ストローマグを持ち歩いて少しずつ飲む。
この飲み方だと、口の中が糖にさらされる時間がずっと途切れません。
神戸市の資料では、200mlのミルクなら15〜20分ほどで飲み終えるのが目安とされています。
3つの条件を、リスクの高さで整理するとこうなります。
| 状況 | リスクの目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 歯が生える前の夜間授乳 | 低い | 歯がないので虫歯の心配はほぼなし |
| 歯は生えたが砂糖はまだ、寝る前にみがいている | 低め | 今のケアを続ければOK |
| 砂糖をとり始めた後、みがかずに寝ながら授乳 | 高い | 寝る前の仕上げみがきを最優先に |
| 哺乳瓶にジュースやイオン飲料を入れて寝かしつけ | とても高い | 中身を水か麦茶に、できれば哺乳瓶を卒業 |
夜間授乳を続けながらできる歯のケア
歯が生えたら、まずはガーゼ拭きから
下の前歯がちょこんと顔を出したら、お口のケアのスタートです。
いきなり歯ブラシだと嫌がる子が多いので、最初は湿らせたガーゼを指に巻き、歯の表面をクルクルとなでるように拭きます。
日本小児歯科学会も、歯が生え始めたらガーゼや綿棒での清拭から始めるよう勧めています。
上の前歯が生えてきたら、上唇の裏にあるスジ(上唇小帯)に注意してください。
ここに歯ブラシが当たると痛くて、歯みがき嫌いの原因になります。
人差し指でスジをそっと押さえてガードしながらみがくと、ぐっと嫌がりにくくなりますよ。
寝る前の仕上げみがきは、米粒大のフッ素で
夜間授乳を続けるなら、いちばん効くのは寝る前の仕上げみがきです。
e-ヘルスネットの「フッ化物配合歯磨剤」によると、歯が生えてから2歳までは、フッ素濃度900〜1,000ppmの歯みがき剤を米粒程度(1〜2mm)使い、1日2回みがくのが目安です。
うがいができない時期なので、みがいた後にティッシュで軽く拭き取ってもかまいません。
みがき方は、歯ブラシを鉛筆持ちにして、小刻みにシャカシャカ動かすだけで十分です。
特に上の前歯の表側と、歯と歯ぐきの境目は汚れがたまりやすいので、ここだけは毎晩ていねいに。
1本10秒でもいいので、全部をきれいにしようと気負わず、毎晩続けることを大事にしてください。
続けやすさで選べるよう、よく使われるケアグッズを比べてみました。
| グッズ | 向いている時期 | 汚れ落ち | 続けやすさ |
|---|---|---|---|
| ガーゼ(水で湿らせる) | 歯が生え始め〜前歯数本 | △ | ◎ 安くて手軽 |
| 歯みがきシート | 外出時・夜中のひと拭き | △ | ◎ 使い捨てでラク |
| 仕上げみがき用歯ブラシ | 前歯が生えそろった頃〜 | ◎ | ○ 慣れるまで練習が必要 |
| フッ素配合の歯みがき剤(ジェル・泡など) | 歯が生えたら〜 | 汚れ落としより歯質の強化 | ○ 米粒大で少量使い |
夜中の授乳後は、完璧を目指さなくていい
夜中に授乳するたびに歯をみがき直すのは、現実的ではありませんよね。
私が保護者さんにお伝えしているのは、「寝る前の1回を確実に」が最優先、ということです。
そのうえで余裕のある日は、授乳後に湿らせたガーゼや歯みがきシートで上の前歯をサッと拭くだけでも違います。
寝かしつけで哺乳瓶を使うなら、中身は水か麦茶に。
赤ちゃんが起きてしまうなら無理はしないでください。
続けられるケアのほうが、たまにしかできない完璧なケアより、ずっと歯を守ってくれます。
やりがちなNG例と、虫歯の初期サイン
こんな習慣は見直しのサイン
これまで指導してきたなかで、虫歯ができた子によく見られた習慣を挙げます。
- 寝る前に歯をみがかず、そのまま授乳で寝かしつけている
- 哺乳瓶にジュースやイオン飲料を入れて、寝かしつけや夜中のぐずり対策に使っている
- ストローマグを一日中持ち歩き、少しずつ飲んでいる
- 歯みがきを嫌がるので、数日まとめてサボってしまう
日本小児歯科学会は、離乳が進んだらコップで飲む練習を始め、1歳6か月頃までに哺乳瓶を卒業するのが望ましいとしています。
いきなりゼロにしなくても、まずは寝かしつけの哺乳瓶だけやめる、という段階的な進め方でも十分ですよ。
上の前歯に白い線が出たら要注意
赤ちゃんの虫歯は、上の前歯の歯ぐきに近い部分から始まることが多いです。
最初は茶色い穴ではなく、白くにごった線や斑点として出てきます。
日本小児歯科学会によると、この白い線は虫歯のなりかけで、毎日の清掃とフッ素塗布によって元に戻る可能性があるそうです。
放っておくと茶色くなり、穴があいてしまいます。
仕上げみがきのときに上唇をめくって、前歯の付け根を見るクセをつけておくと安心ですね。
歯医者デビューは前歯が生えたころ
同じQ&Aでは、上下の前歯が生えたらフッ素塗布を始めることも勧められています。
うがいができない年齢でも塗布はできます。
歯科医院では、みがき残しのチェックや、その子に合った仕上げみがきのコツも教えてもらえます。
「虫歯ができたら行く場所」ではなく、「虫歯にしないために行く場所」として、気軽に使ってほしいです。
よくある質問
卒乳しないと虫歯は防げませんか?
いいえ、卒乳だけが唯一の予防策ではありません。
甘い飲食物をダラダラとらない、寝る前に仕上げみがきをする、フッ素を使う、の3つがそろっていれば、授乳を続けていてもリスクはかなり下げられます。
卒乳の時期は、お子さんの様子やご家庭の事情に合わせて決めてOKです。
歯が生える前の夜間授乳も気にしたほうがいい?
歯が生える前は、虫歯の心配はほとんどありません。
ただ、この時期から授乳後に口の周りや歯ぐきをガーゼで拭いておくと、口を触られることに慣れて、のちの歯みがきがスムーズになります。
麦茶なら哺乳瓶で飲みながら寝てもいい?
麦茶や水は糖を含まないので、虫歯の原因にはなりにくい飲み物です。
ただし、哺乳瓶をくわえたまま寝る習慣が続くと、中身がジュースやミルクに変わったときにリスクが上がります。
寝かしつけと哺乳瓶をセットにしない練習も、少しずつ始めておくとラクですよ。
まとめ
母乳やミルクそのものは、虫歯の主な原因ではありません。
リスクが上がるのは、砂糖をとり始めてからの夜間授乳や、哺乳瓶でのちびちび飲み、そして汚れが残ったまま眠ってしまうことです。
授乳を急いでやめるより、寝る前の仕上げみがきと米粒大のフッ素、上の前歯の白い線チェックを習慣にしてみてください。
夜中の授乳後は、余裕があればガーゼでサッとひと拭きで十分です。
12年この仕事をしてきて思うのは、続けられるケアこそ最強だということ。
今夜の仕上げみがきから、一緒に始めてみましょう!







