最終更新日 2026年8月28日 by eliyeliy
ある日ふと口をのぞいたら、下の歯ぐきに白い点がふたつ。
歯科衛生士の井上佳奈です。
このタイミングで一番よく聞かれるのが「歯固めって買ったほうがいい?」と「歯磨きっていつから?」の2つ。
この記事では、生え始めのサインの見分け方、安全な歯固めの選び方、最初の歯磨きの進め方を順番にお伝えします。
結論を先に言うと、最初の1本が顔を出した日が、お口のケアのスタートラインです。
目次
赤ちゃんの歯はいつから生える?生え始めのサイン
下の前歯から、生後6〜9か月ごろ
日本小児歯科学会のこどもたちの口と歯の質問箱によると、乳歯は下の真ん中の2本から生後6〜9か月ごろに生えはじめます。
そのあと上の前歯が続き、いちばん奥の第二乳臼歯が2歳半ごろに出そろって、全部で20本になります。
生える順番と時期の目安は、おおよそこの流れです。
| 生える順番 | 歯の種類 | 時期の目安 | 本数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 下の前歯(乳中切歯) | 生後6か月ごろ | 2本 |
| 2 | 上の前歯(乳中切歯) | 生後10か月ごろ | 2本 |
| 3 | 上下の側の前歯(乳側切歯) | 1歳ごろ | 4本 |
| 4 | 第一乳臼歯 | 1歳半ごろ | 4本 |
| 5 | 乳犬歯 | 2歳ごろ | 4本 |
| 6 | 第二乳臼歯 | 2歳半ごろ | 4本 |
ただ、この時期はあくまで平均です。
私がこれまでブラッシング指導でお会いしてきたお子さんにも、生後4か月で下の前歯がのぞいていた子もいれば、1歳のお誕生日にまだ1本も生えていない子もいました。
前後半年くらいのずれは珍しくないので、月齢だけで焦らなくて大丈夫。
1歳を過ぎても生える気配がまったくないときだけ、小児歯科で一度見てもらいましょう。
よだれが増えたら「歯ぐずり」かもしれません
歯が歯ぐきを押し上げてくる時期は、むずがゆさで赤ちゃんの様子が変わります。
よくあるのはこのあたりです。
- よだれの量が急に増えて、スタイが何枚あっても足りない
- 手も服もおもちゃも、とにかく口に入れてカミカミする
- 夜中に何度も起きる、寝つきが悪くなる
- 離乳食のスプーンを嫌がる、食べる量が減る
歯ぐきをそっと見てみると、白くぷっくりふくらんでいたり、触ると米粒みたいなコリッとした硬さがあったりします。
それが確認できたら、もうすぐ生えてくるサインです。
熱が出たときは歯のせいにしない
「歯が生えるときは熱が出る」と昔から言われますが、ここは切り分けが必要です。
MSDマニュアル家庭版では、歯の萌出そのもので38℃以上の熱が出ることはないと説明されています。
ちょうど生え始めの時期は、お母さんからもらった免疫が切れて感染症をもらいやすい時期とも重なります。
高い熱や、いつもと違うぐったり感があるときは、歯のせいと決めつけずに小児科へ。
むずがっているだけなら、清潔な指で歯ぐきをやさしくマッサージしてあげるとおさまることがあります。
海外では歯ぐきに塗る麻酔成分(ベンゾカイン)入りのジェルも売られていますが、乳幼児への使用は避けるべきものです。
薬に頼る前に、冷やした歯固めと指でのマッサージで様子を見てください。
歯固めは必要?役割と使う時期
歯固めは「むずむずの逃がし場所」
歯固めは、歯が生えるときの不快感を紛らわせて、赤ちゃんが安心してかめる場所を作ってあげる道具です。
それに加えて、かむ・舌で押す・手で持って口に運ぶという一連の動きの練習にもなります。
離乳食が始まる時期と重なるので、口を動かす経験が積めるのは地味に大きいところ。
出番は生後4〜6か月から1歳半ごろまで
なんでも口に入れて確かめる時期に入ったら、歯固めを渡してみるタイミングです。
歯が生える前から使い始めて構いません。
奥歯が生えてくる1歳半を過ぎると、食べ物をしっかりかめるようになるので、自然と手が伸びなくなります。
買わないという選択もあります
コメント欄でも「せっかく買ったのに一度もかんでくれない」というご相談をよくいただきます。
歯固めは全員に必要なものではありません。
自分の指やタオル、離乳食のスティック野菜で満足している子なら、それで十分です。
「うちの子は歯固め派じゃなかったな」くらいの気持ちで構えておくと、無駄な買い足しが減りますよ。
買う前に試せる代わりの方法もあります。
清潔なガーゼを水で濡らして固くしぼり、冷蔵庫で少し冷やしてから握らせてみてください。
これでご機嫌が直る子なら、高い歯固めをそろえる必要はありません。
安全な歯固めの選び方
素材で選ぶときの比較表
売り場に並ぶ歯固めは、だいたい4タイプに分かれます。
| 素材 | かみ心地 | お手入れ | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| シリコン | やわらかく弾力がある | 煮沸や食洗機に対応した製品が多い | 表面が白くなったり裂けたら交換する |
| 木製 | かたくカチカチ音が鳴る | 水洗い不可のものが多く、乾拭き中心 | 塗装やニスの安全性表示を必ず確認する |
| 布・ガーゼ | 歯ぐきにやさしい | 洗濯機で丸洗いできる | 乾きにくいので生乾きとカビに注意 |
| 保冷ジェル入り | ひんやりして気持ちいい | 冷蔵庫で冷やして使う | 冷凍庫はNG。かたくなりすぎて歯ぐきを傷めます |
歯ぐずりがひどい日は、冷蔵庫で軽く冷やしたシリコンタイプが助けになります。
月齢が低いうちはやわらかいシリコンか布、かむ力がついてきたら木製、という順で試すとハズレが少なめです。
安全性は「表示」と「大きさ」で見る
見た目のかわいさより先に、ここを確認してください。
- 食品衛生法の指定おもちゃに該当するか。おしゃぶりや歯がためは、有害物質の溶け出しについて厚生労働省が規格基準を定めています
- 日本玩具協会のSTマークがついているか。18か月未満向けの検査では、赤ちゃんの口を模した試験板を使って、のどの奥まで届かない形状かどうかまで調べています
- 直径39mmより小さい部品がないか。3歳児が口を開けたときの最大口径がおよそ39mmで、これがまるごと飲み込めてしまう目安です
- ビーズやパーツが接着されていないか。取れて口に入るものは避けます
ひもやチェーンでつなぐネックレス型の歯固めは、私はおすすめしていません。
かんでいるうちに切れてビーズが口に入る危険と、首に絡まる危険の両方があるからです。
米国のFDA(食品医薬品局)は2018年12月に、昼寝中に琥珀の歯固めネックレスで窒息死した1歳半の子と、木製ブレスレットの玉をのどに詰まらせた生後7か月の子の事例を挙げて、乳幼児への使用をやめるよう呼びかけました。
インテリアとしてかわいくても、赤ちゃんの首まわりに常時つけておくものではありません。
毎日のお手入れはシンプルに
床に落ちたら洗う、これだけです。
シリコンなら流水で洗って完全に乾かし、週に1回ほど煮沸か消毒液でリセット。
木製は洗剤や熱湯で表面が荒れるので、固くしぼった布で拭いて風通しのいい場所へ。
どの素材でも、ひび割れ・欠け・変色を見つけたらそこで寿命です。
最初の歯磨きは「口を触る」ところから
ステップ0:口のまわりに慣れてもらう
いきなり歯ブラシを入れると、たいてい嫌われます。
歯が生える前から、授乳やおむつ替えのあとに、きれいな指でほっぺや唇、歯ぐきをちょんちょんと触っておきましょう。
遊びの延長で「口を触られても平気」と体で覚えてもらうのが、最初の1本が生えた日の助けになります。
ステップ1:ガーゼでぬぐう
下の前歯が2本生えた段階では、まだ歯ブラシは急ぎません。
清潔なガーゼを湿らせて指に巻き、生えたての歯の表と裏を軽くぬぐうだけで十分です。
下の前歯は舌がいつも当たっていて唾液も届きやすいので、実はいちばん虫歯になりにくい場所。
ここでの目的は汚れ落としというより、「お口を触る時間」を1日のリズムに組み込むことです。
ステップ2:歯ブラシデビュー
上の前歯が生えてきたら、歯ブラシに切り替えます。
上の前歯は母乳やミルクが唾液で流されにくく、汚れがたまりやすい場所だからです。
選ぶのは、ヘッドが小さくて毛がやわらかい乳児用。
赤ちゃんが自分で持つ練習用と、大人が仕上げ磨きに使う1本は、分けて用意してください。
仕上げ磨きは、ひざの上で
大人があぐらをかいて座り、その上に赤ちゃんの頭をのせる「寝かせ磨き」の姿勢が基本です。
上から口の中が見えるので、磨き残しがすぐ分かります。
歯ブラシは鉛筆と同じ持ち方で、力は毛先が曲がらない程度に。
1本の歯の上で小さくシャカシャカ、歯と歯ぐきの境目はやさしくクルクル。
1本あたり5秒から10秒、全部で30秒もあれば終わります。
上唇の裏側にある筋(上唇小帯)に歯ブラシが当たると痛いので、そこは人差し指でそっと覆って守ってあげてください。
下の前歯は舌が邪魔をしやすいので、歯ブラシを歯の表側から斜めに当てると入りやすくなります。
上の前歯は、唇を軽くめくって根元まで見える状態にしてから磨いてください。
見えないまま手探りで動かすのが、いちばん磨き残しが出るやり方です。
1日何回、いつ磨けばいい?
歯が数本のうちは、1日1回で構いません。
選ぶなら夜寝る前です。
寝ている間は唾液が減って、口の中が汚れを洗い流しにくい状態になるからです。
奥歯が生えてきたら朝晩の2回に増やしていきます。
毎晩同じ流れにしておくと、赤ちゃんも「次はこれ」と予測できて、暴れる回数が減ってくれます。
歯磨き粉とフッ素はいつから使う?
年齢別の濃度と量は2023年に変わりました
日本小児歯科学会を含む4学会は、2023年1月にフッ化物配合歯磨剤の推奨内容を改定しました。
以前は6歳未満に500ppmが目安でしたが、現在の推奨は次のとおりです。
| 年齢 | フッ化物濃度 | 1回の使用量 |
|---|---|---|
| 歯が生えてから2歳 | 1000ppmF | 米粒程度(1〜2mm) |
| 3〜5歳 | 1000ppmF | グリーンピース程度(5mm) |
| 6歳〜成人・高齢者 | 1500ppmF | 歯ブラシ全体(1.5〜2cm) |
使う回数は1日2回。
量さえ守れば、飲み込んでしまってもフッ素の摂取量は問題にならない範囲に収まります。
1500ppmの製品は6歳未満には使わないでくださいね。
うがいができないうちの使い方
赤ちゃんはまだ「ぺっ」ができません。
磨き終わったら口の中をゆすがず、ガーゼやティッシュで軽く拭き取るだけでOKです。
うがいをして流してしまうより、フッ素が歯に残るぶん効果は高くなります。
それでも心配なら、量を米粒よりさらに少なめにして調整してください。
歯医者さんでのフッ素塗布も検討を
日本小児歯科学会は、フッ化物塗布は歯が生えた直後がもっとも効果的で、下の前歯が生えたころから定期的に受けられると案内しています。
歯が生え始めた時期は、かかりつけの歯科医院を決める良いきっかけでもあります。
仕上げ磨きの手つきを直接見てもらえるので、私としてはこの時期の受診をおすすめしたいところ。
のど突き事故と「歯磨き嫌い」への向き合い方
歯ブラシをくわえたまま歩かせない
安全面でいちばんお伝えしたいのが、歯ブラシによるのど突き事故です。
消費者庁の注意喚起によると、平成28年4月から令和3年3月末までに6歳以下の事故情報が120件寄せられ、そのうち104件が3歳以下でした。
歯ブラシが口の中やのどに刺さって集中治療室に入った例も報告されています。
防ぎ方はシンプルです。
- 歯ブラシを持たせるときは必ず床に座らせて、立って歩かせない
- 子ども自身が使う歯ブラシは、のど突き防止のリングやプレートがついたものを選ぶ
- 大人が目を離さない
- 転んで口を打った直後に元気そうでも、後から症状が出ることがあるので受診する
嫌がる日は「全部やる」をあきらめる
ギャン泣きされると心が折れますよね。
私自身、大人になってから矯正装置をつけていた時期に、毎晩の歯磨きが苦行になった経験があります。
うまくいかない日にできることを挙げておきます。
- 汚れやすい上の前歯だけ磨いて、その日は終わりにする
- お風呂の中や、機嫌のいい昼間に一度磨いておく
- 数を10まで数える、歌を1曲だけ歌う、と終わりを見せる
- 磨けた日はその場で大げさに褒める
歯磨きは、この先10年以上つきあう習慣です。
1日完璧に磨くことより、嫌いにさせずに毎日続けるほうがずっと効きます。
続けられるケアこそ最強、というのが私の変わらない考えです。
まとめ
最初の1本が生えたら、まずはガーゼでぬぐうところから。
歯固めは必須ではないけれど、使うならシリコンや木など素材の特徴を知って、STマークと39mmのサイズを確認してから選んでください。
ネックレス型は避ける、これは覚えて帰ってもらえたらうれしいです。
歯ブラシに切り替えるのは上の前歯が生えたころ、歯磨き粉は1000ppmを米粒ぶん。
そして歯ブラシをくわえたまま歩かせない。
今日は全部できなくて構いません。
明日また、ひざの上に寝かせて30秒。
一緒にゆっくり始めましょう。







