最終更新日 2025年7月28日 by eliyeliy

なんだか歯が痛い…。
噛むと違和感がある…。
もしかしたら、その原因は「歯根破折(しこんはせつ)」かもしれません。

こんにちは!
歯科衛生士として12年間、のべ8,000人以上の方のお口の健康をサポートしてきた井上佳奈です。

歯根破折は、自分では見えない歯の根っこが割れてしまう、とても厄介なトラブルです。
でも、正しい知識があれば、リスクを減らし、大切な歯を守ることができます。

この記事を読めば、歯根破折の原因から最新の治療法、そして今日からできる「折れない歯」を目指すためのセルフケアまで、すべてが分かります。
一緒にチェックしていきましょう!

目次

歯根破折とは?基本をおさえよう

歯根破折ってどんな状態?

歯根破折とは、その名の通り、歯の根っこである「歯根」にヒビが入ったり、割れたりしてしまう状態のことです。

歯の頭の部分(歯冠)が欠けるのとは違い、歯茎に埋まっている根っこで起こるため、自分では直接見ることができません。
そのため、気づかないうちに進行してしまうことが多い、ちょっと怖いトラブルなんです。

割れた歯の見えないサインとは

「もしかして私も?」と思ったら、こんなサインがないかチェックしてみてください。

  • 噛んだ時に特定の歯だけ「ズキッ」とした痛みや違和感がある
  • 歯茎がぷくっと腫れている、または押すと膿が出ることがある
  • 以前治療した差し歯や被せ物が、理由もなくグラグラしたり外れたりする
  • 何もしなくても鈍い痛みを感じる
  • 特定の歯の周りから口臭がする気がする

これらのサインは、歯の根っこからのSOSかもしれません。

歯が折れるメカニズム(図解あり)

(ここに歯の断面図イラストを挿入するイメージ)

なぜ、歯の根っこが折れてしまうのでしょうか。
特にリスクが高いのが、神経を抜いた歯(失活歯)です。

神経を抜いた歯は、いわば「枯れ木」のような状態。
生きている木がしなやかなのに対して、枯れ木は栄養や水分が通っていないため、ちょっとした力でポキッと折れてしまいますよね。
歯も同じで、神経を失うと血液が供給されなくなり、もろく、割れやすくなってしまうのです。

歯根破折の主な原因とリスク要因

被せ物や神経のない歯が折れやすい理由

先ほどお話ししたように、一番の原因は「神経を抜いていること」です。
神経を抜いた歯は、健康な歯に比べて破折のリスクが格段に高まります。

さらに、神経を抜いた歯には、補強のために金属の土台(メタルコア)を入れることが多いです。
この金属は非常に硬いため、噛んだ時の力が歯根に集中しやすく、くさびのように歯を内側から割ってしまうことがあるのです。

食いしばり・歯ぎしりの影響

寝ている間や、日中集中している時に、無意識に歯を食いしばったり、ギリギリと歯ぎしりをしたりしていませんか?

こうした癖は、あなたが思っている以上に強い力で歯にダメージを与えています。
特に奥歯には、自分の体重と同じか、それ以上の力がかかるとも言われています。
この強力な力が、歯にヒビを入れる引き金になることは少なくありません。

年齢・性別・生活習慣による違い

歯根破折は、長年ダメージが蓄積した結果として起こることが多いため、比較的中高年の方に多く見られます。
また、硬い食べ物(氷、ナッツ、せんべいなど)を好んで食べる習慣がある方も注意が必要です。
毎日の小さな負担が、ある日突然、歯を「ポキッ」と折ってしまうことにつながるのです。

実際の症例から学ぶリスクサイン

私がこれまで見てきた患者さんの中で、特に注意してほしいのはこんな方です。

「昔、神経を抜いた奥歯に銀歯が入っている。仕事でPCに向かうと、つい奥歯を噛みしめていることがあるんだよね…」

こんな風に、「神経を抜いた歯」+「食いしばりの癖」という組み合わせは、最もリスクが高いパターンの一つ。
心当たりのある方は、今すぐ対策を始めましょう!

気になる予防法とセルフチェック

毎日の歯磨きでできること(シャカシャカ編)

歯根破折の究極の予防は、そもそも「神経を抜かない」こと。
そのためには、虫歯や歯周病にならないための毎日の歯磨きが何より大切です。

歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先をきちんと当てて、力を入れすぎず、優しく「シャカシャカ」と小刻みに動かすのが基本。
虫歯を防ぎ、健康な歯をキープすることが、将来の破折リスクを減らす一番の近道ですよ。

食生活・生活習慣での注意点

毎日の習慣も、歯を守るためには重要です。

  • 氷や飴などをガリガリと噛む癖をやめる
  • 食事は片側だけで噛まず、左右均等に使うことを意識する
  • スポーツをする際は、マウスガードを装着して歯への衝撃を防ぐ

小さなことですが、意識するだけで歯への負担は大きく変わります。

市販のマウスピースやガードの選び方

歯ぎしりや食いしばりの自覚がある方は、歯を守るためにマウスピース(ナイトガード)を使うのがおすすめです。
市販のものもありますが、正直なところ、歯科医院で自分の歯型に合わせて作ってもらうのがベストです。

市販品は手軽ですが、噛み合わせが合わないと、かえって顎の関節を痛めたり、歯並びを悪くしたりするリスクがあります。
まずは一度、かかりつけの歯医者さんに相談してみてくださいね。

「これは危ないかも?」チェックリストつき

ご自身の歯のリスクをチェックしてみましょう!

  1. [ ] 神経を抜いて、被せ物をしている歯がある
  2. [ ] 朝起きた時に、顎が疲れている感じがする
  3. [ ] 集中している時、無意識に歯を食いしばっている
  4. [ ] 家族やパートナーから歯ぎしりを指摘されたことがある
  5. [ ] 硬い食べ物が好きで、よく食べる
  6. [ ] 歯科の定期検診に1年以上行っていない

3つ以上当てはまった方は、歯根破折の予備軍かもしれません。
早めに歯科医院で相談することをおすすめします。

歯根破折が起きたらどうする?治療の選択肢

抜歯だけじゃない?最新の保存療法

「歯根破折=抜歯」と思われがちですが、最近では歯を残せる可能性も出てきました。

  • 口腔内接着法: 割れた部分が比較的小さい場合に、特殊な接着剤を使って歯を残す方法です。
  • 意図的再植法: 一度歯を抜いて、お口の外で破折部分を修理・接着してから、元の場所に戻すという高度な治療です。

ただし、これらの治療は全てのケースで可能なわけではなく、保険適用外の自由診療になることがほとんどです。
それでも「自分の歯を残したい」と強く願う方にとっては、希望の光となる選択肢です。

インプラント vs. ブリッジ vs. 義歯、どう選ぶ?

残念ながら抜歯になってしまった場合、失った歯を補うための主な選択肢は3つあります。

  1. インプラント: 周りの歯を削らず、顎の骨に人工の歯根を埋め込む方法。自分の歯のように噛めるのが最大のメリットです。
  2. ブリッジ: 両隣の健康な歯を土台にして、橋をかけるように人工の歯を入れる方法。比較的治療期間が短いのが特徴です。
  3. 義歯(入れ歯): 取り外し式の人工の歯。周りの歯を大きく削る必要がない場合が多いですが、違和感が出やすいこともあります。

治療の流れと費用感(簡易比較表つき)

それぞれの治療法を簡単に比較してみましょう。

治療法メリットデメリット費用目安(1本)
インプラント・自分の歯のように噛める
・周りの歯を守れる
・外科手術が必要
・治療期間が長い
・保険適用外
30万~50万円
ブリッジ・固定式で違和感が少ない
・比較的治療期間が短い
・健康な両隣の歯を削る必要がある
・土台の歯に負担がかかる
5万~15万円(保険適用の場合)
義歯(入れ歯)・周りの歯を削る量が少ない
・外科手術が不要
・違和感や異物感が出やすい
・発音しにくいことがある
・毎日のお手入れが必要
1万~10万円(保険適用の場合)

※費用はあくまで目安であり、使用する材料や歯科医院によって異なります。

知っておきたい歯科医院での質問ポイント

もし歯根破折と診断されたら、お医者さんにこんな質問をしてみましょう。

  • 「私の歯は、歯を残せる治療(保存療法)の対象になりますか?」
  • 「もし抜歯になった場合、私にとって最適な治療法はどれですか?その理由も教えてください」
  • 「それぞれの治療法のメリットとデメリット、費用や期間について詳しく知りたいです」

納得して治療に進むために、分からないことは遠慮なく質問してくださいね。

セルフケア製品で守る!折れない歯づくり

井上佳奈おすすめのセルフケアグッズ5選

私が普段から患者さんにおすすめしている、歯を守るためのセルフケアグッズのポイントです。

  1. 高濃度フッ素配合の歯磨き粉: 歯質を強化し、虫歯に負けない歯を作ります。
  2. 山切りカットではない、平らな歯ブラシ: 歯面に均等に当たり、効率よく汚れを落とせます。
  3. ワックス付きのフロス: 歯と歯の間にスッと入りやすく、初心者の方でも使いやすいです。
  4. 歯間ブラシ: 歯と歯の隙間が広い部分の汚れを、ごっそりかき出してくれます。
  5. フッ素洗口液: 歯磨きの仕上げに使うことで、フッ素を隅々まで行き渡らせます。

歯磨き粉・ブラシ・フロスの選び方(クルクル解説つき)

フロスを使う時は、指に巻きつけて、歯と歯の間にゆっくり通します。
歯茎を傷つけないように、歯の側面に沿わせて「クルクル」と巻きつけるように汚れを絡めとるのがコツです。
最初は難しいかもしれませんが、これができると虫歯のリスクがぐっと減りますよ!

コスパと効果のバランス比較(一覧表あり)

毎日使うものだから、コストも大事ですよね。

製品カテゴリ価格帯(目安)期待できる効果井上佳奈のコメント
高濃度フッ素歯磨き粉500円~1,500円虫歯予防、歯質強化毎日のケアの基本!1,000円前後のものが成分も充実していておすすめ。
デンタルフロス300円~800円歯間の虫歯予防歯ブラシだけでは6割しか汚れが落ちません。フロスは必須アイテム!
歯間ブラシ400円~700円歯周病予防、歯間の汚れ除去奥歯やブリッジの下などに効果的。サイズ選びが重要なので歯科で相談を。
フッ素洗口液500円~1,000円仕上げの虫歯予防歯磨きが苦手な方やお子様のケアの補助にぴったりです。

NGケア例:やってませんか?折れやすい習慣

良かれと思ってやっていることが、実は歯を傷つけているかもしれません。

  • ゴシゴシ力の入れすぎ歯磨き: 歯や歯茎を傷つけ、知覚過敏の原因にも。
  • 硬すぎる歯ブラシの使用: 汚れがよく落ちる気がしますが、歯の表面を摩耗させてしまいます。
  • 爪楊枝で歯の間を強くつつく: 歯茎を傷つけたり、歯の隙間を広げたりする原因になります。

よくある質問Q&A

歯がしみるのは折れてるサイン?

歯がしみる原因の多くは知覚過敏や虫歯ですが、歯根破折によって歯茎が下がり、根っこが露出してしみることもあります。
しみる症状が続く場合は、一度歯科医院で見てもらうと安心です。

セラミックの歯も割れますか?

はい、割れることがあります。
セラミックは天然の歯に近い見た目ですが、天然歯のような「しなり」がないため、強い力がかかると割れてしまうことがあります。
特に歯ぎしりをする方は、セラミックの歯を守るためにマウスピースの使用が推奨されます。

定期検診で見つかるの?

はい、見つかる可能性は十分にあります。
自覚症状がなくても、レントゲン撮影で偶然見つかるケースは少なくありません。
症状が出る前に発見できれば、治療の選択肢も広がります。
定期検診は、歯を守るための最高の投資ですよ。

子どもの歯も折れる?

子どもの歯(乳歯)が歯根破折することは稀ですが、転んで歯をぶつけるなどの外傷で折れることはあります。
もしお子さんが歯を強くぶつけた場合は、グラグラしていなくても念のため小児歯科を受診してください。

まとめ

歯根破折は、誰にでも起こりうるトラブルですが、その多くは“気づかぬうちに”進行します。

この記事でお伝えしたポイントを、もう一度おさらいしましょう。

  • 歯根破折の最大の原因は「神経を抜いた歯」と「過度な力(歯ぎしりなど)」
  • 予防の鍵は、虫歯を作らないための「正しいセルフケア」と「習慣化」
  • もし破折しても、歯を残せる治療法や、自分に合った補う方法がある
  • 自覚症状がなくても、定期検診で早期発見することが何より大切

私自身、矯正治療中に歯磨きがうまくできず、苦労した経験があります。
だからこそ、「毎日のケアを、いかに楽に、楽しく続けられるか」が大切だと痛感しています。

「続けられるケアこそ最強」です。
この記事が、あなたの「折れない歯」づくりのお役に立てたら、これほど嬉しいことはありません。
一緒に楽しく、大切な歯を守っていきましょう!