最終更新日 2026年2月27日 by eliyeliy

「親知らずが痛い…でも怖くて歯医者に行けない」「歯医者に抜いたほうがいいって言われたけど、本当に必要なの?」――そんなお悩みを抱えている方、実はとても多いんです。

はじめまして!歯科衛生士の井上 佳奈(いのうえ かな)と申します。名古屋市内の歯科医院で12年間勤務しながら、企業向けのオーラルケアセミナー講師も務めています。これまで延べ8,000名を超える方にブラッシング指導や口腔ケアのサポートをしてきました。

その経験の中で、「親知らずってどうすればいいの?」という質問は本当によくいただきます。「全員抜くもの」と思っている方もいれば、「ずっとほっといてる」という方も。実は、親知らずは状況によって”抜くべきケース”と”抜かなくていいケース”がはっきり分かれるんです。

この記事では、歯科衛生士の立場から「判断基準」を丁寧に解説します。ぜひ最後まで読んで、あなたの親知らずがどちらに当てはまるか、一緒にチェックしてみてくださいね!

親知らずってそもそも何?まずは基本をおさらい

親知らずとは、永久歯の中で一番最後に生えてくる歯のこと。医学的には「第三大臼歯(智歯)」と呼ばれ、前歯から数えて8番目に位置しています。通常は10代後半から20代前半にかけて生えてきます。「親が知らない時期に生えてくる歯」という由来から「親知らず」と呼ばれるようになりました。

上下左右に最大4本生えてきますが、個人差が大きく、もともと生えてこない方や、骨の中に埋まったままの方もいます。ある調査によると、18〜30歳の方のうち1本以上親知らずがある方は94.8%で、4本揃っている方は60.7%という結果も出ています。

現代人は食生活の変化により顎が小さくなっているため、親知らずが生えるスペースが不足しがち。そのため、まっすぐ正常に生えてくる方は全体の約3割程度といわれています。残りの多くの方は斜めや横向き、または半埋伏・完全埋伏といった状態になってしまうんです。

生え方は大きく3パターン

親知らずの生え方は、主に以下の3つに分類されます。

  • まっすぐ生えているタイプ(正常萌出)
  • 斜めや横向きに生えているタイプ(傾斜・水平埋伏)
  • 歯茎の中に完全に埋まったままのタイプ(完全埋伏)

この「生え方」が、抜くかどうかの判断に最も大きく影響します。

「抜いたほうがいい」親知らず──7つのサインをチェック

まずは”抜くべき親知らず”のサインをご紹介します。以下のチェックリストで当てはまるものがないか、一緒にチェックしてみましょう!

チェック項目気になる理由
親知らずの周辺が腫れたり痛んだりする智歯周囲炎(細菌感染による炎症)の可能性がある
腫れが数日で治まってもまた繰り返す一度起きると炎症を繰り返しやすく、隣の歯にも悪影響が及ぶ
斜めや横向きに生えている隣の歯に圧力がかかり、虫歯・歯並びへの悪影響が起きやすい
奥歯に食べ物が詰まりやすく口臭が気になる磨きにくい環境で細菌が繁殖している可能性がある
矯正治療中・これから矯正を検討している親知らずが歯並びを後戻りさせるリスクがある
隣の奥歯(第二大臼歯)が虫歯になった親知らずが原因で感染が隣の歯に広がっているかもしれない
頬や歯茎を傷つけている炎症・口内炎の繰り返しにつながる

1つでも当てはまる場合は、早めに歯科医院でレントゲン・CT検査を受けることをおすすめします。

智歯周囲炎は「治った」で済ませないで!

「腫れたけど2〜3日で引いたから大丈夫」と放置している方、実はとても多いです。でも、腫れが治まるのは「炎症が引いた」だけで、「治った」ではありません。一度智歯周囲炎を起こすと細菌感染が慢性化しやすく、繰り返すうちに隣の大切な奥歯を支える骨が溶けていくことも。重症化すると顔全体が腫れ、口が開けにくくなったり、発熱・倦怠感が出たりする場合もあります。「痛みが引いたからOK」ではなく、必ず歯科医院に相談してくださいね。

「抜かなくてもいい」親知らず──こんなケースは経過観察でOK

親知らずは「全員が抜くもの」ではありません!親知らずがまっすぐ生えていて、ほかの歯と同じようにかみ合わせも機能しており、ブラッシングも十分できていれば問題となることはあまりありません。

抜かなくてもよいケースを整理すると、次のようになります。

  • まっすぐきれいに生えていて、上下でしっかり噛み合っている
  • 歯磨きが届いており、虫歯・歯周病のリスクが低い
  • 完全に骨の中に埋まっていて、炎症・違和感・隣の歯への影響がない
  • 将来的に歯を失った際、移植やブリッジの支台歯として活用できる可能性がある

特に「完全埋伏」のケースは意外と誤解されがちで、「骨に埋まってるから怖い」と思う方も多いのですが、周囲への悪影響がなければ無理に抜く必要はないんです。ただし、定期的なレントゲン撮影でモニタリングを続けることは大切です。

また、「将来の移植歯として残す」という考え方も最近は注目されています。大臼歯を失ったときに親知らずを移植する「歯牙移植」は、条件が整えば保険適用になるケースもある治療法です。

「どっちか迷う」ケースはどう考える?

抜くべきか迷う場面も多いですよね。よくある”グレーゾーン”をいくつか見ていきましょう。

上の親知らず vs 下の親知らず

上下で難易度や注意点が違います。上の親知らずは骨が薄くて柔らかいため、比較的抜きやすく、腫れも出にくい傾向があります。一方、下の親知らずは骨が厚く、神経(下顎管)との位置関係が重要になります。下の親知らずが斜めや横向きの場合は、歯科用CTで神経との距離を確認してから抜歯の計画を立てるのが安全です。

矯正治療・妊娠・ライフイベント前は要確認

矯正治療を始める前や妊娠を考えているタイミングでは、あらかじめ親知らずの状態を確認しておくことが大切です。矯正中に親知らずが動いてくると、治療後の後戻りにつながることがあります。また、妊娠中は抗生物質や痛み止めの使用に制限があるため、妊娠前に問題のある親知らずを処置しておくのがベスト。「いつか抜こうかな」と思っているなら、ライフイベントの前に確認しておく習慣をつけてみてください。

抜くなら早いほうがいい?タイミングと年齢の話

「若いうちに抜いたほうがいい」とよく聞きますよね。これは医学的にも理にかなっています。

20代前半までは顎の骨がまだ柔らかく弾力があるため、抜歯がスムーズに進みやすい傾向があります。また、若いうちは親知らずの歯根がまだ完全に形成されていないことが多く、神経から離れているケースも多いため、リスクが低い状態で抜けることがあります。さらに、若い方は回復力も高く、抜歯後の治りが早いというメリットもあります。

顎の骨は20代後半にかけて成熟・硬化していくため、年齢が上がるほど抜歯の難易度が上がりやすくなります。もちろん30代・40代以降でも安全に抜歯はできますが、「そのうち」と先延ばしにしすぎるのは得策ではありません。気になる親知らずがある方は、痛みや腫れが出る前に一度歯科医院でレントゲンを撮っておくことをおすすめします。

いざ抜歯!知っておきたいダウンタイムと術後ケア

「抜歯が怖い」という声はよく聞きます。でも、正しい知識があれば必要以上に怖がらなくて大丈夫!抜歯中は局所麻酔を使いますので、術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。押される感覚や振動・音は感じることがありますが、それは麻酔がしっかり効いているサインです。

術後の経過の目安

時期主な症状過ごし方のポイント
抜歯当日〜2日目出血・痛み・腫れが始まる。痛みのピークは24時間以内安静に。血行を促進する行動(飲酒・入浴・激しい運動)は控える
3〜4日目腫れのピーク。痛みは徐々に和らぐ氷や濡れタオルで外側から軽く冷やす。硬い食事は避ける
5〜7日目腫れ・痛みが落ち着いてくる。縫合した場合は抜糸へ普通の食事に少しずつ戻す。口腔ケアも徐々に再開
2週間以降ほぼ回復。骨の治癒は続く定期検診でフォローアップを継続

これだけは守って!術後の注意点

術後のケアがその後の回復に大きく影響します。以下の点を必ず守りましょう。

  • 抜歯後は過度なうがいをしない(血の塊「血餅」が取れてしまう)
  • 舌や指で抜歯した箇所を触らない
  • タバコは厳禁(ドライソケットのリスクが高まる)
  • 処方された抗生物質・痛み止めは用法・用量を守って飲み切る
  • 1週間を過ぎても痛みが増す・膿が出るなどの異常があればすぐ受診

ドライソケットとは、血餅が取れてしまい、骨が露出した状態のこと。激しい痛みが続くのが特徴で、放置すると感染が広がり、骨の処置が必要になる場合もあります。少しでも「おかしいな」と思ったら、迷わず歯科医院に連絡してくださいね。

「痛くないから放置」が一番危険!放置リスクを知っておこう

「特に痛みがないし、まあいいや」と放置している方に知っていただきたいことがあります。

痛みのない親知らずでも、じわじわと隣の歯(第二大臼歯)に悪影響を及ぼしていることがあります。特に横向きに生えている場合、隣の歯の根っこに常に圧力がかかり続け、知らないうちに虫歯・歯周病が進行してしまうことも。症状が出たときには、すでに隣の大切な奥歯まで失う寸前だったというケースも、歯科の現場ではよく見られます。

また、炎症が重症化すると顎骨周囲炎や含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)に発展することも。さらに稀なケースでは炎症が喉周辺にまで広がり、気道が塞がって呼吸困難になる命に関わる状態になることもゼロではありません。

「痛くないから安全」ではないこと、ぜひ覚えておいてください。

公益社団法人神奈川県歯科医師会の情報提供ページ「親知らずは必ず抜かなきゃダメ?」でも、痛みや腫れが出る前に歯科医院を受診することの重要性が解説されています。ぜひ参考にしてみてください。

また、オーラルケアの基礎情報をわかりやすくまとめたサンスター財団の「親知らず、抜く?抜かない?迷っているあなたに。」も、初めて親知らずに向き合う方におすすめの読みものです。

まとめ

この記事のポイントを振り返ってみましょう!

  • 親知らずは「必ず抜くもの」ではない。生え方と口内への影響で判断する
  • 斜め・横向き・繰り返す腫れ・隣の歯への影響がある場合は抜歯を検討
  • まっすぐ生えていて噛み合わせに問題なく、清掃できているなら経過観察でOK
  • 抜くなら若いうち(20代前半)が回復も早くリスクが低い傾向
  • 術後は血餅を守ること・過度なうがいNG・禁煙が回復の鍵
  • 「痛みがない」=「安全」ではない。定期的なレントゲン確認が大切

私が現場で一番お伝えしたいのは、「まず一度、レントゲンを撮ってもらって状態を知ること」です。自分の親知らずがどこにあって、どんな生え方をしているか把握しているだけで、その後の選択がとてもラクになります。

恐怖心や面倒くさいという気持ちもすごくわかります!でも、早めに知ることが、大切な歯を守る一番の近道。「続けられるケアこそ最強」がモットーの私ですが、親知らずに関しては「早めの確認こそ最強」とお伝えしたいです。

気になる方は、ぜひかかりつけの歯科医院に相談してみてくださいね。一緒に、大切な歯を守っていきましょう!